出産時、または出産の前に赤ちゃんの命を失うことは、とても悲しく心に深い傷が残る経験です。英国のサウス・ヨークシャーからノッティンガムシャー北部にかけての地域にはこれまで、この喪失を経験した母親や家族に寄り添うような適切な施設がありませんでした。それはつまり、慌ただしい雰囲気の産科病棟で、周りでは知らない赤ちゃんの元気な産声が響き、その誕生を祝う家族の歓声が聞こえる中で、自分の赤ちゃんに別れを告げなければならない母親がいるという状況です。このような環境に居続けるしかないという現実は、母親のつらい気持ちに追い打ちをかけます。そのため105-N地区のライオンズは、セレニティ・スイートという施設を開設することにしました。赤ちゃんを亡くすつらさに向き合わなければならない両親や家族が滞在するためのスペースを特別に設計したのです。
このスイートは、ご家族にとってより快適でプライバシーを保ちやすい環境なので、ここでゆっくり過ごして、赤ちゃんとの永遠の思い出を作っていただきたいと願っています。赤ちゃんと実際に触れあって、別れを惜しむ時間を過ごすことができます
この施設は、英国ドンカスターのドンカスター王立総合病院内に設けられました。早産や、出産時またはその直後に子どもを失うという出来事を経験した家族が、そのつらさにじっくり時間をかけて向き合うためのスペースとなっています。セレニティ・スイートは、同病院に関連する事業に特化した慈善団体であるDoncaster and Bassetlaw Teaching Hospitals Charityが「セレニティ運動」と銘打って開催した、大規模なキャンペーンの一環として実現しました。
このスイートは、ベッドルーム、キッチン、書斎、バスルーム、シャワールーム、物置を備えています。美しい内装に、穏やかな雰囲気の家具と適切な照明が整えられています。周りの物事に敏感で感情がむき出しになりやすい状況にある人々に対して可能な限りのサポートを提供するために、防音完備で、ある程度の期間ならこもりきりでも生活できるような設計となっています。Doncaster and Bassetlaw Teaching Hospitals（ドンカスター＆バセットロー教育病院）の最高経営責任者であり、大英帝国勲章受章者でもあるリチャード・パーカー氏は、 同施設について次のように述べています。「非常につらい経験をしたご家族の皆さんに、少しでも安らげる、プライベートな空間として、この施設を利用して頂きたいと思っています。そのために当面必要になるものはすべて揃えたつもりですし、当病院にはグリーフケア専門の助産師チームも配置しています」
105-N地区のライオンズと、同病院向けの事業に特化している非営利団体のDoncaster & Bassetlaw Hospitals NHS Foundation Trustは、協議を重ねながらこの事業を進めて成功に導きました。ライオンズクラブ国際財団（LCIF）は、この事業のために20,000ドルの人道支援マッチング交付金を拠出しました。またライオンズは地域で資金調達活動を行い、この事業に対する地域社会の認識を高めました。さらには王立看護大学の紹介で、ある方がこの事業に特別に参加したのです。2023年9月、セレニティ・スイート開設にあたってアン王女がこの施設を訪問し、施設の開設を記した公式プレートの除幕を行いました。そのためこのプレートには、王室からの訪問があったことも記載されています。
同病院では、セレニティ・スイートを利用する母親とその家族が毎年45〜50人いるだろうと見込んでいます。同病院に勤務するグリーフケア専門助産師のリアン・モリスは、この新しいスペースについて次のように話します。「このスイートは、ご家族にとってより快適でプライバシーを保ちやすい環境なので、ここでゆっくり過ごして、赤ちゃんとの永遠の思い出を作っていただきたいと願っています。赤ちゃんと対面して、お別れする時間を過ごすことができます」
人道支援マッチング交付金は、世界中の極めて重要な多種多様な人道的・社会的ニーズに取り組むライオンズ主導の人道奉仕事業の確立または拡大を支援するための資金援助プログラムです。資金援助プログラムは、地域社会のニーズに応えようとするライオンズを後押しするもので、交付金はそのための各種事業の実現に役立ちます。
ライオンズクラブ国際協会ウェブサイトの人道支援マッチング交付金のページで詳細をご確認ください。
シェルビー・ワシントンは、ライオンズクラブ国際財団（LCIF）のコンテンツスペシャリストです。
