現在、全世界が深刻な公共衛生の危機に瀕しています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行により、数十年にわたり医療従事者に突きつけられてきた医療の格差という課題が劇的なまでに浮き彫りにされました。私たちは、適切な医療ケアを受けることに苦労している社会経済の下層にいる人々、そしてその家族やコミュニティーの安全を確保するための一般的な衛生教育の必要性を目の当たりにしています。
しかしながら、このようなパンデミックの中だからこそ、通常とは異なるユニークな形で人々が団結する姿も私は目にしています。政府や保健省、製薬会社、そして慈善団体が団結し、そこから生まれる集合的な力がこの暗い時代に一筋の希望の光を投げかけているのです。
公共衛生上の災禍に立ち向かうには、連携して行動を起こすことが成功の鍵を握ります。コミュニケーション、調整、そしてチームワークは、真の変革を実施し、地域社会全体の医療の方向性を変えていくために必要不可欠なものなのです。ここ数か月間、新型コロナウイルスによって気力が削がれることもありましたが、それでも公共衛生に取り組んでいる世界の多様なメンバーの間で、共通の敵に立ち向かうための橋が架けられたことには深い感銘を受けています。
予防可能な失明との闘い
私は米国ジョージア州アトランタにある カーターセンターのトラコーマ撲滅プログラム のディレクターを務めることに誇りを感じています。ここでの私の役目は、毎年数百万もの人々を治療するために、協力関係にある企業や財団、地域のボランティア、そしてアフリカ諸国の保健省と毎日連携することです。
地域主体のトラコーマ対策の一環として、顔を洗っているエチオピアのアムハラ州ゴンダールに住む二人の子ども(2020年7月)。 写真提供:カーターセンター/エミリー・スタウブ
トラコーマは細菌による目の感染症で、基本的な衛生状態やきれいな水が確保できず、汚水処理など十分な公衆衛生が保たれていない地域に見られる疾患です。トラコーマは感染症による失明の世界中で最も大きな原因となっていますが、入手が容易な抗生物質の投与により簡単に予防できる病気であり、また短時間で行える手術によって病気の影響を食い止めることもできる疾患です。20年以上にわたってトラコーマとの闘いの最前線に立ってきたカーターセンターですが、そこにはパートナーの存在があります。
LCIFとカーターセンターの揺るぎないパートナーシップ
カーターセンターでの勤務を始めた時、1953年からの誇り高きライオンでもあるカーター元米大統領とライオンズクラブ国際財団(LCIF)に対する彼の熱い思いに私は深い感銘を受けました。そして私は、「人道奉仕事業をおこない地域と世界に希望をもたらすライオンズとそのパートナーの取り組みを交付金を通じて支援する」というLCIFの使命への理解を深めていったのです。2017年に私はライオンズクラブ国際協会の一員となり、すぐにそれが奉仕活動を重視した私のキャリアの中の不可欠な部分となりました。
1994年以来、LCIFはその「視力ファースト・プログラム」を通じて、カーターセンターへの合計6,700万米ドルを超える60以上の交付金を承認してきました。これらの交付金は、アフリカとアメリカ大陸の全土でトラコーマと河川盲目症(河川で繁殖する感染した黒バエに刺されることで広がる寄生虫感染症で、永久的失明につながることの多い目の病気)との闘いに取り組むカーターセンターの視力に関連したイニシアチブを支援するべく贈られたものです。カーターセンターの歴史の中でも、このパートナーシップは最も揺るぎない、影響力の大きなコラボレーションの一つとなっています。
Okechukwu Obodoさんは、15年前に河川盲目症で視力を失いました。ナイジェリアのエヌグ州Nkanu West LGAのOgonogoejiNdiunoで隣人の助けを得ながら一人暮らしをしています。 写真提供:カーターセンター/ルース・マクドウォール
連携による成果とCOVID-19への対応
LCIFからの大きな支援を受け、カーターセンターは次のような数々の公共衛生活動を達成する機会に恵まれてきました。
- アフリカの7か国とアメリカ大陸の6か国の人々の生活の質と医療を改善。
- トラコーマ治療のために1億8,900万回以上の抗生物質を投与。
- 重点を置いている国々で、視力を守るための睫毛乱生症修正手術を82万回以上実施。
- トラコーマのさらなる感染拡大から人々を守るために330万個のトイレを設置。
- 680万の人々を守るために2億5,700万回以上の河川盲目症の治療を実施。
ライオンズクラブとカーターセンターのパートナーシップは、2019年だけでも河川盲目症へのイニシアチブによって1,020万の人々の、またトラコーマに関連した活動によって1,500万の人々の暮らしに大きな影響をもたらしています。
カーターセンターとLCIFの共同作業は、新型コロナウイルス感染症の大流行の中でも、感染をしない、させないための適切な予防策を講じた上で継続されています。大規模な投薬活動を含むすべてのプログラムにおいて、マスクや個人用防護具(PPE)の着用、手洗いの習慣、ソーシャルディスタンスを保つなど状況に応じて適切に実践しています。今後も私たちの活動に関連したCOVID-19の感染リスクの軽減と地域社会の医療システムの受け入れ体制の強化という目標を念頭に、すべての活動を監視し続けていきます。
世界中が団結して取り組むことが最良の防御策
例年にも増して今年はさらに、カーターセンターではこのような公共衛生への深刻な懸念がある中でも私たちが確実に活動を継続できるように支援してくれるLCIFのような献身的なサポーターを持つことに誇りを感じています。
1996年に平和部隊のボランティアに加わった時、私には一人のひとの人生にポジティブな影響を与えたいという思いがありました。その当時は、世界中の何百万という人々の人生の方向を変えるような世界規模の集合的活動の一部に自分が加わることになるなど思いもよりませんでした。確かに言えるのは、ここまでの道のりで多くの人々から私自身そしてセンターに協力をいただいたおかげで、このような実績を積んで来られたことを非常に誇りに感じるということです。多くの方々からの支援がなければ、パートナーシップとコラボレーションの持つパワーを私が知ることはなかったはずです。
LCIFとカーターセンターは、連携して取り組むことによりもたらされる力を信じています。河川盲目症とトラコーマの撲滅や新型コロナウイルス感染症の収束は、単一の団体だけの力で成し得ることでは決してありません。この闘いには、きれいな水と医薬品の確保や、手術の実施以上のことが求められています。この闘いは人間の権利の一つであり、平和を実現するための架け橋でもあります。カーターセンターとLCIFとの共同作業による努力の甲斐もあって、何百万という人々がトラコーマと河川盲目症から解放されたのです。
さらに詳しい情報は、ライオンズ‐カーターセンター「視力ファースト・プログラム」パートナーシップの歴史をご覧ください。
*ライオンズクラブ国際協会を代表して指導者らが2019年後半にカーターセンターを訪問し、ジミー・カーター元米大統領(写真には写っていない)、カーターセンターでトラコーマ撲滅プログラムのディレクターを務めるケリー・カラハン氏、河川盲目症撲滅プログラムのディレクターを務めるフランク・リチャーズ氏と会談。
ケリー・キャラハンは、カーターセンターのトラコーマ撲滅プログラムの監督に当たるディレクターを務めています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界中の地域にさまざまな影響を与えています。私たちがどこにいても安全に奉仕できるようにするため、ライオンズは疾病管理センター、世界保健機関、または地方自治体のガイドラインに従う必要があります。あなたの地域で安全に奉仕するために役立つ情報ページ 安全に奉仕するためにをご覧ください。