ドクター・スースとして世界中に知られているセオドア・ガイゼルは、1970年、しゃれたケニア山サファリクラブで休暇を過ごしていました。あるそよ風の吹く午後、彼は原稿の山に取り組んでいましたが、それがいずれ彼のもっとも人気のある(そして論議を醸し出す)本のひとつ『ロラックス』となる原稿でした。
その寓話は、消費主義と、健康な環境とその持続性を対比させています。物語は「ワンスラー」が「トルッフラ」の木から毛糸を収穫し、それを編んで「スニード」を作って売るところから始まります。「ロラックス」—小さくてオレンジ色で、いつもしかめっつらで口髭の生えたもこもこの丸い生き物—は、ワンスラーに教えようとします。すべての生態系がこの木々に依存しているのだと。ロレックスの警告は聞き入れられず、トルッフラの木と周りの生態系が絶滅の一歩手前となって物語は終わります。
イラストから見るとこの物語は架空の世界の出来事のように見えますが、実のところ、ガイゼルの空想の産物ではなく、彼がケニアで実際に見た風景がもとになっているのです。
実のところ、ケニア山はパタスザルの主な生息地です。パタスザルは小さく、オレンジ色で陰気な顔をした類人猿で、ホィッスリング・ソーン(Whistling thorn)という名前のひょろ長い、アカシアの木の一種がないと生存できません。
この象徴的に環境問題を取り上げた児童書が、今日でもいまだ危機にさらされている、実在するサルとその生息地をモデルに書かれた可能性はあるでしょうか?
この本が最初に出版されておよそ50年が経ちましたが、ケニアは不気味なほどガイゼルの寓話に似通った環境問題と闘っています。半世紀以上にわたって、炭と木材の生産、野放図な伐採、そして都市化がケニアの豊かで多様な自然を侵食してきました。1980年代の半ばまでに、ケニアの原生林の70パーセントが消失してしまいました。
森林が失われたことは、ケニアの人々にとって広範囲にわたる影響をもたらしました。山や森林はケニアにとって天然の「給水塔」の役割を果たしてきました。雨季には雨水をためこみ、自然にろ過し、乾季には地下水脈や地上の水脈を満たしてきたのです。さらに、山林の消失は、鉄砲水や洪水につながります。なぜなら、雨水をため込み吸収する落ち葉や木の根がなくなるからです。
地球の未来は、森林の未来に密接にかかわっている。
結果として、ケニアは干ばつと洪水とにひんぱんに襲われるようになり、乾燥した気候のために農業はますます難しくなり、多くの国民が食べ物と水の不足に苦しむことになりました。パタスザルはまだ絶滅危惧種として登録されてはいませんが、生息地の破壊により個体数は減少しています。ガイゼルの寓話は現実のものとなりつつあるようです。
でも、絶望してはなりません。
答えは樹木にある
「木がたくさんあればあるほど、洪水の数は減ります。異常気象現象も減り、もっと落ち着いた、健康的な環境で暮らすことができるようになります」イリノイ州シカゴ郊外にあるモートン樹木園の世界的な樹木専門家であるマーフィー・ウエストウッドは言います。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、「地球の未来は、森林の未来と密接にかかわっている」と最近の報告書に記載しました。
これはよい知らせです。なぜなら、ライオンたちが知っているとおり、木は植えることができるからです。森林は生まれ変わることができます。破壊されたものは取り戻すことができますが、簡単なことではありません。
「改革は制約から生まれるものです」ニュージーランドの気候変動問題大臣ジェームズ・ショウは、2018年9月、サンフランシスコで開かれた地球気候問題サミットにおいてそう発言しました。「ものごとが本当に制約されたとき、その時こそ我々の創造力が働くのです」
創造力なら、ライオンズが一番です。
ライオンズが木を植えます
1400万人の会員からなるライオンズクラブは強い発言力を持っています。世界中で、ライオンズはその発言力をもって気候変化への認識を訴え、活動してきました。2011年、ウィンクン・タム2011~2012年度国際会長は、100万本の木を植えることをライオンズに呼びかけました。その呼びかけに応え、ライオンズは人が住んでいるすべての大陸に1500万本を植樹し、それ以降にも何百万本もの木を植え続けています。
そしてケニアでは、この国がここで生まれたあの物語の二の舞にならないよう、ライオンズクラブは必死に取り組んでいます。2013年、世界中の、また、ケニア国内の財団と協力して、ライオンズクラブは5年間で1000万本以上の植樹をしました。
でも、活動は何百万本もの植樹でなければならないわけではありません。森林はひとつひとつの種から再生します。地域社会によっては、新しい森よりも、たった一本の木が必要な場合もあるかもしれません。その下の木陰で人々が休んだりできるからです。
『ロラックス』では、物語の最後になって、ワンスラーはやっと、ロラックスが何を伝えようとしていたのか理解します。ワンスラーは少年に最後のトルッフラの種を与えます。
「君みたいな人が本当に心から気にかけなければ、何もよくなりはしない。本当だよ」
あなたのクラブで、植樹イベントを計画し、コミュニティに活動を広げて行ってください。あなたに最も合った 奉仕事業プランナーを選び、私たちのウェブサイトで活動を始めるために必要なリソースを見つけてください。
どのように LCIFが資金を提供することによってライオンズに力を与え 環境を守り、未来の世代のために世界をより良い場所にしているかや、あなたも寄付をしてグローバル重点分野を支援できるか、学んでください。
Joan Cary is the assistant editor for LION Magazine. Erin Kasdin in the senior editor of LION Magazine.
Primate photo by Zoranmilisavljevic83/Getty Images