2020年3月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(大流行)により、ライオンズの多くは自宅からほとんど外出できない生活を余儀なくされ、各地区のリーダーは、地域社会に奉仕するために必要となる、新しいクラブの結成や会員の勧誘を今後どのように進めればいいかと悩んでいました。従来型クラブの結成式をバーチャルで実行し、対面での宣誓や儀式は行わないというアイデアは、とても想像しがたいものでした。
「普段ならライオンズとして当然実行することはすべてやろう、ウイルスのせいでやめてしまうのはおかしいと、彼は考えています。ただ、やり方を少し変えようとしているだけです」
ところが、カナダで初めて行われた、従来型クラブのバーチャル結成式は、国会議事堂を訪れたときのような厳かな雰囲気でありながら人の温かみと仲間意識が感じられるものでしたが、これはどのようにして実現したのでしょう。
オンタリオ州ジョージアン・ベイ・タウンシップに結成されたバクスター・ウォード・ライオンズクラブのチャーターナイトの数週間前、グローバル・アクション・チームのエリアリーダーを務める元地区ガバナーのクリス・ルイスは、パンデミックの拡大が続く中、対面でのチャーターイベントが実際に開催できるかどうかを心配していました。そこでルイスは、バーチャルな形式に変更するというアイデアをクラブに持ちかけ、クラブのメンバーと協力してイベントの段取りを変更しました。
バーチャル形式で実施したチャーターイベントは、A12地区のほとんどで開催されている対面式のチャーターナイトと大差なかったと、ルイスは振り返ります。「従来の形式でのチャーターナイトを決行していたら、恐らく通常通りのイベントになったことでしょう。ただ、味の保証はできないローストビーフが夕食に出たかもしれませんが」と、ルイスは笑います。
とはいうものの、チャーターイベントではバーチャルでも対面でも、鍵となる要素がいくつかあり、バーチャルで開催する場合は多少の微調整が重要になります。
出席者リストを広げて臨機応変に
チャーターイベントにスピーカーやゲストを招待する場合、対面でもバーチャルでもどれほど早くに連絡するのかと尋ねられたルイスは、次のように答えました。「日程を決め次第、すぐに連絡を取ります。政治家の多くは過密なスケジュールで行動していますが、出席の返事をもらえれば、彼らは大抵来てくれます」
またルイスは、多忙なリーダーに対応するため、イベントの予定を柔軟に変更できるように準備しておくことも提案しています。「イベントの段取りをその場で調整しなければならないこともあります。彼らは一晩に2~3件のイベントに出席するつもりでいることが少なくないからです。今回もそうでした。市長、州首相、連邦議会の議員などを招待して出席してもらうのは難しいことではありません。彼らはもともと出席するつもりで予定してくれていました」とルイスは話します。
「従来のチャーターナイトでは、クラブの新会員が30~40人、地区からのゲストが同じく30~40人出席していました。近隣に住んでいる国際理事のトム・ゴードンなど、素晴らしいゲストスピーカーを招くことはできたかもしれません」とルイスは付け加えます。ところがオンラインイベントとして実施したために、対面でのイベントであれば、予算面から考えて、招待するのは困難だったと思われるゲストや講演者を招くことができました。例えばライオンズクラブ国際協会の国際第三副会長でカナダ人のパティ・ヒルです。
より幅広い層の人々とつながり、招待できるようになったのですから、こうした機会を逃さないようにしましょう。オンラインなので、招待客も対面の場合に比べれば出席しやすいでしょう。
出席者を惹きつけて離さない魅力的なビジュアルと情報を提示する
ライオンズクラブのチャーターナイトでは、国歌斉唱が行われることがしばしばあります。出席者を喜ばせるため、バクスター・ウォード・チャーター・ナイトの主催者はカナダ国歌斉唱の際、上空から撮影したカナダ各地の風景や、カナダの文化や人々の瞬間を切り取った、あまりの美しさに鳥肌が立つほどのビデオを流しました。
バーチャル・チャーターナイトでもう1つ感動的だったのは、ピーター・ケッツィア市長が、町が存在する場所の土地に対する感謝の言葉を述べたことでした。市長はスピーチの中で、次のように語りました。「昔から先住民が暮らしてきた土地にクラブは結成されました。先住民は今もこの土地を大切にしています。彼らは現在も私たちの地域社会の一員であり、私たちは彼らに敬意を表したいと思っています」 地元の文化や伝統を祝い、認めることで、体験がより意義深いものになり、クラブと地域社会とのつながりも深まります。
バーチャル・チャーターナイトで参加者の関心を維持するための手段として最も重要なのは、対面式のイベントならば必ず注目されていたはずの文書や人物を画面に登場させることです。ルイスは次のように説明します。「この式典で通常、チャーターメンバーの入会式を取り仕切るのは地区ガバナーか地区コーディネーターです。「今回はチャーターメンバーにとって、より印象深いイベントになるように、(会員)証書に各人の顔写真も加えました。こうしないと、チャーターメンバー30人、そしてたくさんのカメラという状況では問題が発生する可能性があったでしょう」
クラブのチャーターメンバーは33人いたため、このウェブイベント全体を通じて、映像や音声が途切れる瞬間が時々ある可能性が高かったはずです。そこで解決策として、チャーターメンバー各人の人物紹介のスライドをPowerPointで作成し、顔写真を掲載しました。チャーターメンバーを紹介したのは、この地域に15年住む、クラブの初代会長となったベス・ハインツマンでした。
ルイスはこう付け加えました。「通常は式典の際に額装されたチャーターが手渡されるので、今回はチャーターをスキャンした画像を画面に表示しました」額装されたチャーターは後日、クラブに直接渡すことができます。
バーチャルイベントを開催するなら利用するツールの練習を事前にできるだけ繰り返す
ルイスはマクドナルド社(McDonald’s Corporation)で営業部長(ゼネラルマネージャー)を務めており、社内研修の講師として10年以上の経験があります。彼はまた、講師育成研究会(FDI)を2011年に卒業し、ライオンズ公認講師プログラム(LCIP)を2017年に修了しました。バーチャルイベントに対する彼のアドバイスは、講習会に対する彼のアドバイスと同じです。
ルイスは次のように持論を述べます。「講習会で行うべきなのは、常に時間に余裕を持って、会場に早めに着くようにすることです。部屋の準備をして、使用する機器を全部点検します。プロジェクターはちゃんと作動するか、音響は問題ないか、といったことです」
また彼は、「これと全く同じことをバーチャルミーティングを開催するときもします」とも付け加えます。「開始時間の5分前にログインすればそれでいいと思っている人が多いのでしょうが、そうはいかないと私は思います。準備作業もすべて自分で行わなければなりません。GoToMeetingなどのウェブ会議システムを使用する場合は、そのシステム上で音声が想定どおりに動作しているかどうかを確かめておく必要があります。会議の参加者全員が、システムの操作方法を理解していることを確認する必要もあります」
今回実施したイベントについて、ルイスは次のように振り返ります。「司会者など、重要な役割を果たす人たちには前日に集まってもらい、ちょっとしたリハーサルをやりました」
市長のような外部の招待客や、前日のリハーサルに出席できない人について、ルイスは「イベント開始時刻の20~30分前にログインして、音声やカメラが正常に動作するかどうか、操作方法を把握しているかどうかを確認するように私たちは提案しました」と話します。
また、バーチャルイベントでも対面イベントでも、その会議の主要な人物と、事前に議題を共有するのは良い習慣です。 「議題をどのように進めるか、簡単に説明しました」と、ルイスは話します。「それぞれの議題について何が期待されるかを主要人物に理解してもらえるよう、事前に議題を共有しておくのは、どのような会議でも理想的な方法です」
ユーモアのセンスを忘れずにマイペースで
どんなイベントにも当てはまることですが、どれほど念入りに準備を進めても、ちょっとしたトラブルは起こるものです。この種のイベントを企画する際、ルイスは常にチームメンバー数名に待機してもらい、必要に応じて支援を受けます。
イベントの最中に地区ガバナーの音声が不調になり突然途切れた際、グローバル会員増強チーム・コーディネーターのルース・ロバーツは、場が静まり返ったところでクラブ結成に至った経緯を説明したので、ルイスは機転を利かせてロバーツの話を引き継ぎ、チャットに寄せられた質問を見て、それに対する回答を伝えて場をつなぐことができました。
大事なのは、流れを止めずにイベントを進めて、多少の過ちや機器の不具合が発生しても、ひるまずに行動することです。「イベントの成り行きに対して過度に批判的にならないようにしましょう」と、ルイスは提案します。「議題の一部を飛ばしたり、何かを見逃したりしても、それに気づく人はほとんどいないでしょう。参加者は、イベントに参加することだけでも非常に興奮して、主催者の努力に感謝しています。その場で学んだことを自分の中で受け止め、次の機会にもっとうまくやれればそれでいいんです」
COVID-19のパンデミックの中、A12地区が成功を収めることができたのは、地区ガバナーのジェームズ・ジョーンズのおかげだとルイスは話します。「彼は本当に、こんな時だからこそ立ち止まってはいけないと感じていました。COVID-19が来ようが何だろうが、立ち止まってはいけません」と、ルイスは話を続けます。「彼は以前と変わらず、周りの人々を1つの計画、1つの行動にまとめることを継続しています。普段ならライオンズとして当然実行することはすべてやろう、ウイルスのせいでやめてしまうのはおかしいと、彼は考えています。ただ、やり方を少し変えようとしているだけです」
バーチャル例会の開催方法や安全に奉仕する方法の詳細については、ライオンズクラブ国際協会ウェブサイトの 「安全に奉仕するために」ページをご覧ください。
クリスティ・カーナッツは、グローバル・アクション・チームで米国およびカナダ担当のフィールドスペシャリストを務めています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界中の地域にさまざまな影響を与えています。私たちがどこにいても安全に奉仕できるようにするため、ライオンズは疾病管理センター、世界保健機関、または地方自治体のガイドラインに従う必要があります。あなたの地域で安全に奉仕するために役立つ情報ページ安全に奉仕するためにをご覧ください。